密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「ずるいって、なにがだ」
「そんな顔されたら……戻ってきちゃう。あなたを好きだった頃の、愛しい感情が全部」
悔し気にそうこぼした私に玲士は一度優しいキスを落とし、後頭部をそっと引き寄せて自分の胸にくっつける。
規則正しく鳴る彼の心音に、不思議と心が安らいだ。
「なにをためらう必要がある。そのまま本能に従って、俺を愛せばいい」
「……いい、のかな。本当に」
「いいに決まってる。雛子が幸せならきっと煌人も――」
話の途中で、ふいに玲士が黙り込んだ。彼の腕の中で目を閉じ鼓動の音に集中していた私は、しばらく経ってもなにも話さない玲士を怪訝に思い、顔を上げる。
「玲士? どうしたの?」
「……いや、なんでもない。しかしそろそろ煌人が寂しがるから、雛子は戻った方がいい」
「あ、そうだよね。ケーキ切らなきゃ」
あたたかい腕から抜け出すと、ドキドキから解放されてホッとした反面、名残惜しさで胸がきゅっと締めつけられた。
こんな痛み……もう、認めるしかない。
私、また同じ人に……玲士に、恋をしている――。