密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「雛子。最後にこれを」
自分自身と対話していたら、玲士がスッと、リボンのかかった細長い箱を私に差し出した。
「えっ? これって……」
「見ての通り、クリスマスプレゼントだ。部屋に戻ったら開けて」
玲士はサラッと言って微笑むが、私はまさか自分にまでプレゼントをもらえるなんて思ってなかったから、戸惑ってしまう。
「嘘……。でも、私はなにも」
「気にするな。今日の俺はサンタクロースだ。大切な人にプレゼントをあげるだけで幸せなんだよ」
なんてきざなセリフだろう。でも、玲士はカッコつけたいわけじゃなく、きっと本心から言ってくれているのだろう。満足げな彼の顔を見ていると、それが伝わってくる。
「ありがとう」
「どういたしまして。じゃあな、ケーキ、食べすぎるなよ」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
空になった白い袋を肩にかけてアパートの階段を下りていく、半分変身の解けた玲士サンタ。その姿が強烈に愛しく思えて、私は手の中にあるプレゼントの箱を、胸にギュッと抱きしめた。