密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
◆甘く穏やかな日々
一月二日。正月休みで混雑する遊園地の入り口で、俺はひとりソワソワしながら、待ち人ふたりを待っていた。
息子の前で父親として振舞うだけのことに、こんなに緊張するとはな……。
大学の卒業式で、首席の卒業生総代として学生たちの前で挨拶をした時も、SAKAKIコーヒーの社長に就任し、所信表明をした時も。俺は特別心を乱すことなく、極めて冷静な自分でいることができたのに……。
否応なく高鳴る胸の音を聞きながら、幾度となく確認している腕時計に再度目をやる。
約束の十時半よりまだ三十分も前。早すぎるとわかっていたが、俺は一時間前からここにいるのだ。
顔を上げ、最寄り駅の方向から流れてくる人波に目を凝らす。この行動も何度繰り返したかわからないが、無意識にふたりの姿を探してしまう。
「……雛子?」
すると、多くのカップルや家族連れに紛れて、愛しい女性の姿がちらっと見えた気がした。少し歩いて彼女のいた方に注目すると、途切れた人波の隙間から、今度は煌人の姿も見えた。
まだ時間には早いのに、来てくれたのか。
ふたりの到着に喜びを感じるとともに、ますます緊張が増して手のひらに汗が滲んだ。