密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 体が熱く溶けて、愛し合う気持ちごとひとつになりそうだ……。

 そんな思いに浸り恍惚としながら、俺は雛子の中で限界を迎えた。
 
 彼女に体重を預けたまま脱力し、目を閉じて呼吸を整えていると、密着している彼女の体が小刻みに震えだし、鼻を啜る音が聞こえ始めた。

 まさか、泣いてる……?

 ぎょっとした俺は手を突いて少し体を上げると、雛子の顔を覗く。すると、彼女はくしゃっと顔を歪めて、大きな瞳からぽろぽろと涙を流していた。

「どっ……どうしたんだ雛子。もしかして、俺が無理をさせたせいか?」
「違うの……大丈夫。ただ……」

 嗚咽を混じらせながら、途切れ途切れに雛子が話す。俺はすっかりうろたえてしまって、指の腹で彼女の涙を拭いながら、じっと耳を傾けるしかできない。

「ただ……うれしかったの。別れる直前は、ずっと玲士の気持ちが見えなくて……体を重ねていてもどこか切なかったから」

 それは四年前、俺が帰国の件を言い出せず、やみくもに彼女を求めてしまった頃のことだろう。

 あの時の俺は自分の不安を紛らわすのに必死で、周りが見えていなかった。そのせいで、雛子にも切ない思いをさせた。

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