密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「ただいまー」
アパートに着くと、煌人は二階の部屋までの階段を、元気よく駆け上がっていく。
その若さとエネルギー、少し分けてほしい……。一日働いて疲れ果てた私は、重い体を引きずるようにして階段を上った。
私と煌人のお城は、小ぢんまりとした1LDK。煌人が成長したらもう少し大きな部屋に住みたいという願望を抱きつつも、とりあえずは快適に暮らしている。
「煌人、まずは手を洗って」
「はーい」
洗面台で手を洗う煌人の隣で、私は保育園のリュックから汚れ物を出して洗濯機に入れていく。エプロン、タオル、おしぼり。それからコップと歯ブラシは軽く洗って……。
「あれ?」
歯みがきセットの巾着を開けた私は、ふと声をあげた。中に見慣れない新品の歯ブラシが入っていたのだ。
偶然にも、煌人の大好きなジンジャーエールゴールドの絵がプリントされた歯ブラシだが、うちでは買った覚えがない。
保育園の先生方も忙しいので、お友達との取り違えが起きることもままある。きっと今回も、意図せず紛れてしまったのだろう。