密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 SAKAKIコーヒーの、子育てに関する制度はどうなっていただろう。恥ずかしい話だが、自分に煌人という子どもがいると知るまで、その辺りは少々無頓着であった。

 ……明日、すぐに秘書に確認させよう。

「ママも、無理しちゃだめだよ?」

 それまで大人の話を静かに聞いていた煌人が、雛子にそう忠告した。

 雛子はふっと微笑んで「ありがとう。気をつけるね」と答える。

 相変わらず優しい息子だと頬が緩む反面、心配するのは雛子だけなのか?と少々ジェラシーを感じたので、俺は思わず尋ねる。

「煌人。パパの心配は?」
「えっ? あっ、忘れてた」
「忘れてたのか……」

 がくっと肩を落とす俺を、雛子がクスクス笑う。

 煌人はなにがおかしいのかわからずにキョトンとしていたが、それすらもかわいいので、心配してもらえないことなどもうどうでもよくなって、結局最後は俺も笑顔になった。

< 143 / 175 >

この作品をシェア

pagetop