密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
【変な客+カラフルな法被+丸眼鏡+私を知ってる=間山】
一瞬のうちに頭の中でそんな等式を立てた私は、「わかった、すぐ行くね」と返事をした。女の子は安心したようにドアを閉め、表に戻っていく。
「じゃあ私、そろそろ戻りますね」
「うん、行ってらっしゃい」
笑顔の聖子さんに送り出され、私は店舗に戻って行った。
現在時刻は、午後二時すぎ。ちょうどお客さんの波が途切れるアイドルタイムということもあり、店は空いていた。
間山はカウンター席にいて、白のカットソーにボタニカル柄の法被を羽織った、相変わらずの個性的なファッション。
しばらくカウンターに頬杖をついてぼんやり宙を見ていた彼だが、私の姿に気づくとかすかに笑って手を上げた。
「久しぶり、間山。どうしたの?」
「ちょっと前にスプリング・デイに行ったら、お兄さんがこの店のことを教えてくれてな。雛子の顔を見に来た」
「そっか。コーヒー飲む? この店ではマシンが淹れるんだけど、それでもいいなら」
「ああ、構わない。雛子のコーヒーが飲めない生活にも、だいぶ慣れたしな」