密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
投げやりな調子でそう言った間山にふっと苦笑をこぼすと、私はカウンターの中でコーヒーの準備をした。
最もおいしい淹れ方はやはりハンドドリップだと思うが、機械もなかなか侮れないのだと、ここに勤め始めてから知った。
SAKAKIコーヒーがコーヒーマシンのメーカーと共同で開発したという特別なマシンが出すコーヒーは、他のコーヒーショップチェーンとは一線を画した、本格派の一杯なのだ。
「お待たせしました」
本当はセルフサービスなのだが、喫茶店に慣れている間山には特別にカウンターまで運んであげた。
間山は湯気の立つマグカップを持つと鼻を近づけ、「ふむ」と感心したような声をあげてからコーヒーをひと口飲む。
「どう?」
「ああ、悪くない。……どうやら俺はもう大丈夫のようだ。雛子のコーヒーがなくても」
ホッとしたようにそう言った間山は、一旦カップを置いてジッと私を見つめる。