密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「煌人、これ、お友達と入れ替わっちゃったのかな?」

 手洗いうがいを終え、タオルで口もとを拭いていた煌人に尋ねる。すると煌人は肩をビクッと跳ねさせて、不自然に何度も瞬きしながら説明する。

「違う。……ぼくのだよ」
「え? でもママ買ってないよ、これ」
「……もらったの」

 煌人は後ろめたそうに目を伏せ、ぽつりと言った。

「もらったって……いつ? 誰に?」

 保育園では、友達同士でプレゼントをし合ったりするのは禁止だ。といってもまだ煌人の三歳児クラスでは、そういう心配をする必要はないと思ってのだけれど……。

「ママがいないとき、誠おじさんのお店で……知らない男の人に」

 言いながら、煌人の目が泣きそうに潤んでくる。私に叱られるのがわかっているのだろう。

 春日家のルール、というかどこの家もそうだと思うが、『知らない人からものをもらってはいけません』と口酸っぱく言い聞かせてあるから。

 ……しかし、保育園でなく店での出来事だったとは意外だ。私が間山のところに配達に行っていたときのことだろうか。

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