密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
その緊張感のない発言に、私も、それに運転席の玲士も思わずクスクスと笑った。
まったく、うちの子は勇敢なんだか能天気なんだか……。
でもこの調子なら、今回のことが妙なトラウマになったりはしなさそうだからよかったかな。
「しかし、なんだかどっと疲れたな……。今夜は外食にするか」
「いいね、煌人、なに食べたい?」
「えっと、オムライス!」
「よし。パパがいいお店を知っているから、任せろ」
家族の平和が脅かされた後だろうか。三人で交わすなにげない会話がいつもより愛しく感じられて、私は心地よい車の揺れに身を任せつつ、しみじみと幸せに浸るのだった。
九月の新店舗のオープンが近づいてくるにつれ、私は忙しくなった。
ひと月前の八月にはそれまで働いていた店舗から一時的に本社に異動し、責任者としての研修を受けたり、最終的な確認作業や、八月最後の日曜日に予定されているプレオープンイベントの準備に追われ、玲士より帰りが遅くなることもあった。