密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「ただいま~」
その日も二十一時頃にクタクタになって帰宅すると、「おかえりママ!」と煌人が出迎えてくれた。
今日は玲士が時間を作って、煌人のお迎えから夕食、お風呂まで面倒を見てくれたので、すでに煌人はパジャマ姿だ。
いつも通りの我が子の笑顔にしみじみ癒されつつ室内に上がると、玲士はキッチンにいて、私のために夕食を盛り付けてくれていた。
「ただいま。いい匂い」
「お帰り雛子。今夜は煌人のリクエストで、〝本物のハヤシライス〟だ」
わざわざ〝本物の〟というフレーズをつけた玲士に、私は思わず吹き出す。
玲士と暮らすようになってから、煌人は初めて牛肉で作ったハヤシライスの味を知り、そのリッチな味わいに感動して〝本物のハヤシライス〟と呼ぶようになった。
「でもなんか寂しいな。私の作るやつは偽物かぁ」
「違うよママ。あれは偽物じゃなくて〝ママのハヤシライス〟で、どっちも美味しいけど今日は本物を食べたい気分だっただけ」
「ふふっ。ありがと」
ダイニングで煌人とそんな話をしているうちに、玲士がハヤシライスを皿に盛り付けて、サラダとともにテーブルに運んでくれた。