密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
私はバッグから、私が個人的に招待したいお客さんのリストを取り出して、向かいの椅子に座った玲士にチェックしてもらう。
スプリング・デイでお世話になった兄や常連の佐古田さん、稲垣さん、それに間山。父の友人で、ニューヨークで私をバリスタとして育ててくれた師匠とその奥様。
SVとして相変わらずバリバリ仕事と家庭を両立させている聖子さんに、真菜ちゃん親子。呼びたい人には全部声を掛けたつもりだ。
「いいんじゃないか? 抜けているのは煌人くらいだ。楽しみだな。みんなに披露するのが」
「うん。あとは、プレオープンにふさわしい美味しいコーヒーを、全力で淹れるだけだね。……さすがに緊張してきたな」
神妙にそう呟いた私に、玲士が穏やかな笑みを向ける。
「雛子なら大丈夫だ。俺が保証する」
「玲士……ありがとう」
一番そばにいるパートナーからの励ましに、一気に勇気づけられた。
玲士の期待に応えられるよう、頑張らなきゃね。
私は気合を入れるようにもりもりとハヤシライスを食べ、仕事への英気を養った。