密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「ほら、帽子を取らないと」
玲士のそんな声とともに、頭の上に乗っていた帽子がパッと取り去られる。
すると、煌人と真菜ちゃんが緊張の面持ちで一歩一歩私に近づいてくる。
自然と身を屈めた私の頭に、ふたりは持っていたレースの布……ウェディングベールと思しきものを、ふわりとのせた。
「ママ、きれい!」
「そ、そう……?」
首から下は、制服のシンプルなシャツとエプロンのままの即席花嫁だけれど、息子に褒められるとまんざらでもなくて、私は照れ笑いをした。
「さて雛子。次はなんだと思う?」
不意に玲士がそんな質問をしてきて、私は眉根を寄せる。
「えっ? そんなこと言われても……」
戸惑って玲士の瞳を覗いたら、彼はどうも妖し気に瞳をきらめかせてじりじり顔を近づけるので、私はまさかと思って慌てる。
「あ、あの、みんな、見てるけど……」
戸惑いながら見回した店内には、家族に友人、会社関係の顔見知りもいっぱい。ひとり離れた場所にいる間山なんか、すでに感動でボロボロ泣いている。
それに、煌人や真菜ちゃんも見ている。教育に悪影響じゃない? 大丈夫?