密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「本物の結婚式だって、そういうものだろう。観念するんだな」

 う、嘘……っ!

 ドキドキしてギュッと目を閉じると、顔に掛かるベールがあげられ、まぶたの向こうが少し明るくなる。直後、玲士のまとうフレグランスの香りがふわっと濃くなって、唇に柔らかい熱が触れた。

 私たちがキスをした瞬間、店内からは盛大な拍手や、ひやかすような口笛、女性たちの黄色い声が上がる。

 は、恥ずかしい……。

 頬がかぁっと熱くなるのを感じつつ薄っすらと目を開けると、とても幸せそうに微笑む玲士の顔が間近にあった。

「愛してるよ、雛子。これからもずっと」
「玲士……うん。私も」

 大切な家族に、やっと叶えた、ふたりの夢のお店。守るべきものが増えるごとに、私たちの絆はきっとまた強くなる。

 ゲストたちからの冷やかしの声と、私たちの恋のそばでいつもあたたかい湯気を立てていたコーヒーの香りの中で、愛を誓い合った私と玲士は見つめ合う。

 すぐ隣では、最愛の息子がはち切れんばかりの笑顔を浮かべ、誰より一生懸命な拍手で、私たちを祝福していた。




 FIN

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