密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 それから一週間。私はスプリング・デイに訪れる男性客を注意深く観察していたが、煌人に近づいたと思われる男の来訪はなかった。

 このまま二度と会うことがなければいいけれど……。そう願いながら、いつものようにランチタイムの店を訪れた工務店のふたりを接客していたときだった。

 カラン、とドアベルが鳴って新たな客が来店したので、ドアに顔を向けて「いらっしゃいま――」と言いかけた私は固まった。

 四年前と変わらない、長身ですらりとした体躯。さらりと横に流した前髪から覗く、鋭い目力を持つ切れ長の瞳。スッと通った鼻筋に、輪郭のハッキリした薄い唇。

 忘れようとしても忘れられなかった元恋人、(さかき)玲士がそこに立っていた。

「玲士……」

 呆然としながらその名をつぶやいた瞬間、玲士と目が合った。まるで時間が止まったかのように周囲の音が聞こえなくなり、瞬きもできずに彼を見つめる。

「どしたの雛ちゃん、あのイケメン知り合い?」

 佐古田さんの声に我に返った私は、慌てて笑顔を取り繕いオーダーを確認した。

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