密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 玲士は低い声で私の名を呼んで、伸ばした手で私の腕を掴んだ。その手のひらは思った以上に熱くて、必死で装っている冷静のメッキが剥がれそうになる。

 それでも私は感情を抑え、掴まれた腕と彼の顔を交互に見て「なに?」と静かに尋ねた。

「そこに座ってくれ。話がある」
「……無理。見ればわかるでしょ? 仕事中なの」
「話が息子のことでもか?」

 私はぴくりと眉を揺らし、玲士を凝視した。

 なんで、私に息子がいると知っているの? 誰に聞いたの? まさか、勝手に調べたとか……?

 玲士は言葉を失い立ち尽くす私の腕を離し、傍らに置いたビジネスバッグから大きな茶封筒を取り出してテーブルにのせた。

 〝見てみろ〟と言うように視線で促され、私は仕方なく彼の対面に座る。そしておそるおそる封筒に手を伸ばし、中の書類を取り出した。瞬間、どくんと心臓が大きく揺れる。

「ちょっ、ちょっと、なにこれ……」

 書類の一番上、大きく記されている文字は【DNA父子鑑定報告書】だった。

 すぐ下には、春日煌人の名と、榊玲士の名。そしてよくわからない数字の並んだ表があって、一番下には【生物学上の親子である可能性:>99.9%】と記されている。

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