密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

  この報告書はいったい……。私は状況を理解しきれず、ただ玲士の顔を見つめる。

 彼は一度コーヒーに口をつけ、目を閉じてゆっくり味わう。そして「やっぱりうまいな」とひとりごちると、静かにカップを置いた。

「煌人は俺の息子だな?」

 ゆっくり目線を上げた玲士が、端的に尋ねてきた。

 しかし、私がその質問に答える前に、そちらからも説明すべきことがあるだろう。

「煌人のDNAなんて、どこでどうやって手に入れたの? いつあの子に近づいたの?」
「別に、無理やりさらって髪を引っこ抜いたりはしていないから安心しろ。歯ブラシを借りただけだ」
「歯ブラシ……ってまさか」

 その単語が思い起こさせるのは、一週間前の煌人とのやり取りだ。

 幼児の使い古しの歯ブラシを欲しがるなんて、いったいどこの変質者かと思っていたけれど……。

「新しい歯ブラシの方は、使ってくれてるか? 煌人が好きだというヒーローの」

 悪びれもせずそう言った玲士の言葉で確信する。あの日煌人に接近したのは彼で、新品と交換に煌人の歯ブラシを手に入れ、無断でDNA鑑定に回したのだ。

 
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