密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
二度と会うことはないと思っていた男からの、突然すぎる求婚。なにか裏があるに違いない。そう思っても、鼓動は勝手に騒ぐ。
「返事はいくらでも待つ。ただし、断るという選択肢はナシだ」
「……は?」
それ、おかしくない? 考える時間を与えるフリだけして、こちらの意見は全く無視だ。
あまりに身勝手な理屈に呆然としてしまうが、玲士は飄々とした様子で腕時計を確認すると、カップに残っていたコーヒーを一気に飲み、ソファから腰を上げる。
「じゃ、今日のところは引き上げるが、また連絡するよ。煌人にもよろしくな」
「連絡って、どうやって……」
玲士と別れてすぐに、私は携帯の番号も、メールアドレスも変えている。SNS関係もすべて退会した。
「言っただろ。優秀な興信所にありとあらゆることを調べさせたって」
不敵な微笑みでそう言うと、玲士は脇に畳んでいたコートを羽織り、この店には不似合いの都会的な空気を引き連れて、颯爽と店を出て行った。
「なんなの……」