密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「なぁ煌人。煌人はパパに会ってみたい?」
閉店後の店内で、いつものようにカウンターに座っていた保育園帰りの煌人に、兄がそんな質問を投げかけた。ぎょっとした私は、思わず洗い物の手を止める。
「ちょっと、お兄ちゃん……っ」
どういうつもりなのだろう。
小声で異を唱えるが、兄は煌人を見つめたまま静かに答えを待っている。
「遠くにいるから会えないんじゃないの?」
キョトンとして聞き返した煌人の純粋な瞳に、胸がチクッとした。
煌人に父親のことを話すとき、私はいつも『遠くの国でお仕事をしてるから会えないの』と嘘の説明していた。
いつかは本当のことを話さなければならないというのは、重々承知しているのだけど……。
「そうだな。でも、もし近くに帰ってきたとしたら――」
「会いたい!」
兄の言葉にかぶせて、煌人がハッキリ断言した。その返事を聞いて、兄は優しく微笑みながら尋ねる。
「会って、なにをしたい?」
「えっとね……僕のおもちゃを全部見せてあげて、一緒に遊びたい。シュワレンジャーごっこするの。あと遊園地に行きたいな、ママと三人で。それとね、それとね」