密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
アパートに帰宅し、煌人を寝かしつけた後。なんとなく一杯飲みたい気持ちになり、自分のご褒美用に買ってあった特売の缶ビールを冷蔵庫から出してテレビの前に座った。
頭を使わず、笑えてホッとするような番組が見たい。そう思いながらリモコンを操作していると、ローテーブルに置いていたスマホがふいに振動する。
「うん? 知らない番号……」
そうつぶやくのと同時に、脳裏に浮かんだのは玲士の顔。
『また連絡する』なんて言っていたけれど、昼間会ったばかりでもう? いや、別人かもしれないけど。
……出るべきか、出ないべきか。
震え続けるスマホを凝視しながら、私はとりあえず缶のプルタブを開ける。
そうしてひと口ゴクッとビールを飲むと、なんとなく勇気が出た気がして、画面の通話マークに指を滑らせて耳にあてた。
「もしもし」
『俺だ。今、話せるか?』
この声……玲士。ドキッと鳴った胸をごまかすように、再度ビールに口をつける。
それにしても、私が声だけで自分を判別できるのを見越した言い方がなんとも腹立たしい。