密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
◆一杯のコーヒーに落とされて
雛子と出会ったのは、五年前。SAKAKIコーヒーの次期社長として、そしていちビジネスマンとして、自らのスキルアップを目的にニューヨークにMBA留学していた頃だ。
俺が選んだのは世界各国から優秀な人材ばかりが集まったトップスクールとあって、授業の内容、そして学生たちと交わすディスカッションも有意義なものばかり。
しかし、慣れない文化圏での生活に、俺は少々ストレスがたまっていた。
そんなとき、ふと立ち寄った小さなカフェ『Healing Coffee』で注文した一杯のブレンド。それが、俺と雛子を引き合わせた運命の一杯だった。
六月上旬のニューヨークは日本の梅雨にも似た雨の季節を迎えていて、その日も朝から雨。スクールでの授業を終えた頃には、湿気を吸った衣服が生乾きの洗濯物のような嫌な匂いをさせていた。
加えて日々の疲労も蓄積していたため、俺はとても憂鬱な気分で、窓際の席から止む気配のない雨をジッと睨んでいた。
しばらくして、店員の女性がコーヒーを運んでくる。