密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 得意げに胸を張る彼女はまるで子どものようなのに、その無邪気さはやはり俺の胸の鼓動を速める。

 ……間違いない。俺は彼女に惹かれているのだ。

 観念してそう認めた俺は、さっそく行動に出ることにした。昔から、欲しいものはなにがなんでも手に入れるのがポリシーだ。

『仕事は、何時に終わる?』
『え? 十九時ですけど』

 腕時計を確認した俺は『あと三十分か』とつぶやき、彼女に問う。

『ここで待たせてもらっても?』
『え? 待つってなにを?』
『きみを』

 なんとも鈍い彼女は俺の口説き文句に気づかず、怪訝そうに眉根をぎゅっと中央に寄せる。

『……なんのためです?』
『誘っているんだよ、デートに。一緒に食事をしよう。それでコーヒーの話をもっと聞かせてくれ。もちろん、きみ自身の話も』

 彼女はキョトンと目を瞬かせ、かと思うと急にぽっと頬を赤く染めた。どうやらやっと状況を理解したらしい。

 この様子では、彼女はずいぶん男慣れしていない。ついでに、押しにも弱そうだ。

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