密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

『どうする?』

 すくい上げるように顔を覗き込むと、彼女は困ったように視線を泳がせながらも『私でいいなら』と承諾してくれた。

 その後彼女を連れていったのは、日本人はもとよりあらゆる人種のニューヨーカーに人気の寿司バー『MIYABI』。

 スタイリッシュな店構えから日本の寿司屋とは雰囲気が違い、握り寿司ではなく、ポップで華やかなロール寿司を売りにしている。

 色味の落ち着いた和モダンな家具や照明、季節の生け花などを配した店内を、彼女は物珍しそうにキョロキョロ見ていた。

 カウンター席につくと、俺は白ワインと適当なオードブル、ロール寿司の盛り合わせを注文し、『そういえば』と彼女を見る。

『まだ名乗ってもいなかったな。俺は榊玲士だ』
『春日雛子といいます』

 改めて挨拶をかわし、間もなく運ばれてきた白ワインで乾杯した。

『雛子はいつからニューヨークに?』
『三年前です。大学を卒業してすぐ』

 ストレートなら、二十五になるかならないかの年か。俺より五つも年下とは、思っていた以上に若い。

< 42 / 175 >

この作品をシェア

pagetop