密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
『三年……そんなに短い間で、あれほどうまいコーヒーを淹れられるようになったのか?』
『本格的なバリスタ修業はこっちに来てからですけど、私の実家、喫茶店なんです。なので、昔からコーヒーが身近にあって、味にも人一倍うるさくて』
『なるほど。もともと資質があったんだな』
感心してうなずいていると、今度は逆に雛子の方から質問される。
『玲士さんはどんなお仕事を?』
『……日本の飲食系企業の海外事業部にいるんだ。オフィスがこっちにあってね』
SAKAKIコーヒーに海外事業部があるのも、そのオフィスがニューヨークにあるのも決して嘘ではない。……が、今の俺は経営者になるべく勉強中の学生だ。
俺はその事実を咄嗟に飲み込み、ごく普通のサラリーマンを装った。
目の前の雛子に純粋に惹かれているからこそ、将来会社を背負って立つ立場であることはとりあえず伏せておきたかった。
変な先入観を持たれて、距離を置かれたくない。対等な男女関係でありたいと思って。