密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「佐古田さん、酒・煙草・ギャンブル全部やりますもんね。結婚したら不幸になること間違いなし」
「うるせえ稲垣。お前だってヲタ活とやらに大金はたいてるだろ」
この喫茶店に勤め始めたばかりの頃は、彼らのこんなやり取りを見て〝喧嘩が始まるのでは〟と心配になったりもしたけれど、これはふたりの日常会話。
稲垣さんは佐古田さんの言葉を完全にスルーして、アイスコーヒーにミルクを注ぎながら言った。
「まぁ、お互い、雛子さんには釣り合わないってことですね」
「つーわけだ雛ちゃん。悪ぃけど、ダンナ探しは他をあたってくれ」
「……なんで私がフラれた感じになってるんですか!」
むくれて彼らの席から離れ、カウンター内のキッチンに戻る。コンロの前では、この店の店主で私の七つ年上の兄でもある春日誠が、パスタの茹で加減をチェックしていた。