密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
『そういえば、初めて会ったとき俺に出してくれた〝雨〟のブレンド。あれもなかなかよかった』
『ありがとう。季節だけじゃなくて、お天気とか、その頃に咲く花の香りとか。そのとき漂っている空気と溶け合うような、最高の一杯を淹れるよう、いつも心がけてるから』
雛子は照れくさそうにしながらも、心に携えた信念を滲ませた口調で言った。
俺はきみに、なんと言えばいい? 雛子には、夢に向かってまっすぐ進んでほしい。しかし、俺は日本に帰らなければならない。
……こんなにも愛しく思う相手と離れられるのか? こうして、触れたいときに触れられなくなる生活に、耐えられるのか?
俺は無意識に雛子を抱き寄せ、ギュッと力を込めて腕の中に閉じ込める。
『玲士?』
『……離せるわけがない』
かすれた声でつぶやくと、雛子が胸もとから上目遣いで俺を見る。
『どうしたの?』
『好きだよ、雛子。好きなんだ。どうしたって』
『うん、わかってるよ。私だって好――』
今、好きだと言われたら、切なさでどうにかなってしまう。
そう思った俺は、雛子の唇をふさぎ、その声を奪った。一度離した後も、角度を変えながら食むように唇を重ね、募っていくばかりの恋情をぶつける。