密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 しかし、季節が春を迎え新しい年度が始まった頃。俺は一度だけ、実際に雛子の番号に電話をかけた。復縁を迫るため……ではなく、彼女に許可を取りたいことがあったのだ。

 現在、全国各地と世界数カ国で展開しているコーヒーショップは、良くも悪くも、どの店でも同じ味が飲め、価格は手ごろ。ちょっと休憩がしたいと思ったら誰でも気軽に入れるような、大衆的な店だ。

 安らげる内装、行き届いたサービス、季節ごとの新メニューなど、日々試行錯誤しながら運営しているが、やはりファストフード感は否めない。

 SAKAKIコーヒーのブランド力を上げるには、もっと、コーヒーそのものを純粋に楽しめるような、ワンランク上の店舗づくりが必要なのではないか。

 社長職に携わるようになってから、俺は漠然とそんなふうに思うようになった。

 しかし、ワンランク上とは、具体的にどんな店にしたらよいだろうか。

 そんな疑問を抱くのと同時に脳裏をよぎったのが、雛子がいつか聞かせてくれた、夢の話だった。

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