密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

『レイジ! 座って座って』
『久しぶりだな。テリー』

 十一月下旬のある日、俺は都内の料亭を訪れ、ニューヨークのスクールで友人になった、アメリカ人の会社経営者、テリーと会っていた。

 彼は鮮やかな赤髪にグレーの瞳を持つ美青年で、俺の退会したスクールを好成績で卒業。その後着々と日本で起業する準備と日本語の勉強を進め、ひと月前に東京でIT関連会社を設立し、忙しい日々を送っている。

『ところでレイジ、痩せたんじゃないの?』

 テリーが所望した冷酒で乾杯し、軽く近況を報告し合った後、豪華な懐石料理の並ぶテーブルの向こうから、テリーが心配そうに尋ねてくる。

『ああ、少しな』
『大丈夫か? 帰国してすぐお父さんの代わりに社長になって、おまけに仕事をしながらMBAスクールにも通っていたんだろ? 休息が足りてないんじゃないのか?』

 テリーは矢継ぎ早に質問を飛ばしてくるが、痩せてしまった理由は、彼の心配してくれているようなことではない。

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