密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
『仕事なら、ちゃんと自分の限界は理解したうえでやっているから問題ない。ただ、こっちに帰国するときにその疲れを癒やしてくれる存在を失ってしまって……』
ため息交じりにそう明かすと、テリーはきょとんと瞬きを繰り返す。しかしやがて、興味津々な様子でテーブルに身を乗り出した。
『なんだよレイジ、あの頃恋人いたの? 全然知らなかったよ』
『そりゃ、話してなかったからな。……しかし、別れて四年が経つのに、未だに彼女の夢を見る。そして朝起きると、涙で目元が濡れているんだ。自分がこうも未練たらしい男だとは知らなかったよ』
自嘲気味に話し、冷酒のグラスに口をつけて一気にあおった。
そういえば、こんなふうに誰かに雛子との恋愛について語るのは初めてだな……。アルコールの効いてきた頭でぼんやりそう思っていると、テリーが真剣な顔で言う。
『そんなに好きなら、会いに行けばいいじゃないか』
『俺だってそうしたいさ。居場所がわかればな』
空になったグラスに、手酌で冷酒を注ぐ。そうしてまたぐいっと酒を喉に流し込み、〝会いたくても会えないんだ〟と、テリーを怒鳴ってしまいそうな自分をたしなめる。