密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
『彼女、ニューヨークにいるんじゃないのか?』
『わからないんだ。……電話番号は変えられてしまったし、職場だったカフェに聞いても、彼女はもう辞めたと言われた』
ニューヨークでバリスタ修業を続けたいと言っていたはずなのに、別れて数カ月で店を辞めるなんて。その行動が不可解すぎて、雛子の気持ちがまったく見えなくなった。
『彼女って、日本人?』
『ああ』
『めちゃくちゃコーヒー淹れるのがうまい?』
『……ああ、そうだが』
なぜ、テリーがそれを?
怪訝そうに眉を顰める俺に、彼はさらに質問を重ねる。
『その店の名前って……もしかして、Healing Coffee?』
雛子のいたあの店の名をすんなり言い当てられ、俺は絶句した。その反応を見たテリーは、なぜか複雑そうな顔になり、俺から目を逸らす。
まるで、雛子が辞めた理由に心当たりでもあるような……。
『テリー、彼女がいたのはその店だ。なにか知っているなら教えてくれ』
今度は俺がテーブルに前のめりになる番だった。あのカフェを知っているなら、珍しい日本人の女性バリスタ、雛子に会っていてもおかしくない。