密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
それにしても、喫茶店で再会したときよりも女性らしいメイクに、毛先を少し巻いたのか、肩のところでくるんと丸まった髪。
俺と会うためにお洒落をしてくれたのだろうかと、勝手に自惚れてしまう。
「今日は一段とかわいいな」
思わず手を伸ばし、彼女の髪を一束すくって口づける。……懐かしい、雛子の香りだ。
「や、やめてよ家の前で……っ」
「誰も見ていないだろう」
照れる雛子にそう言ったのはいいが、ふと視線を感じた。雛子の髪を放して辺りを見回すと、数メートル離れたところから俺たちを見て、呆然と固まるひとりの男がいた。
ぼさぼさ頭に丸眼鏡、個性的な柄のポンチョを身につけた、風変わりな格好をしている。
「あ、間山……」
雛子はそうつぶやくと、俺から一歩距離を取り、気まずそうな顔をした。
誰だ間山というのは。なぜ、その男に遠慮したように俺から離れる。
まさか、雛子の新しい男……? いや、興信所の調査でそんな存在はなかったはずだが。
怪訝な顔で見つめた先の彼は、口を半開きにしたままで動かない。
雛子は相変わらず気まずそうに俯いていて、俺たち三人の間にはなんとも言えない不穏な空気が流れていた。