密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「きみこそ誰だ。俺は雛子の――」
「お、お兄ちゃんのお友達なの、この人!」

 私は玲士の言葉を遮るように彼と間山の間に立ち、咄嗟に口から出まかせを言った。

 今、間山に本当のことを告げたら、おそらく面倒なことになる。高校時代からの友人、かつ店の常連でもある間山は、私が煌人を妊娠して帰ってきた当時、ものすごく驚き、心配した。

 と、同時に、煌人の父親である私の元恋人――つまり玲士のことを『ろくでもない男だ』と怒ってもいた。

 詳しい話まで聞かせていないから仕方ないけれど、間山の中での玲士は、身ごもった恋人を捨てた、冷酷非道な人物なのだ。その相手が今目の前にいると知ったら、どんな行動を取るかわからない。

「ほら、お兄ちゃんも私も車持ってないからさ。今日はこの……榊さんが店の買い出しに車を出してくれたの。ねっ、榊さん。そうですよね?」

 私は玲士を見上げ、〝ここは話を合わせて〟と視線で訴える。

 玲士は最初こそ不本意そうな仏頂面をしていたが、やがて間山に向き直り、口を開いた。

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