密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
サラッと玲士の口から出たその発言があまりにあり得ない話なので、私は思わず笑い飛ばした。
「間山が? ないない。ずっと友達だもん、私たち」
「……本当にそう思うのか? さっきの俺たちの話を聞いてたのに?」
「ああ、仮に友だち以上の気持ちがあったら~ってやつ? だってあれは言葉通り仮の話でしょ? 間山って作家だからなのか、いつも簡単な話をわざと難しくして言うの。今回もきっとそうだよ」
自信を持ってそう断言すると、玲士は難しい顔で前方を睨みながらつぶやく。
「少しだが、同情するぞ、間山……」
その独り言に首を傾げていたら、車が一度赤信号で停まる。こちらを向いた玲士が「ところで」と言って真剣な顔をしたので、どきりと胸が跳ねた。
「今日は何時まで一緒にいられるんだ?」
甘い声で尋ねられ、ますます鼓動が騒がしくなる。目を合わせていると緊張してしまうので、左手首に巻いた腕時計を確認しながら口を開く。
「煌人とお兄ちゃんは、動物園に行ってるんだけど……帰ってくるのはたぶん、五時くらいかな」
「わかった。いくら名残惜しくても、それまでには帰すよ」
「……うん。よろしく」