密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
結局は、私の自己満足なのかもしれない。でも、初めて両親揃って息子のプレゼントを選んであげられたことに、母親としてささやかな喜びを感じているのだ。
「……煌人は幸せだな」
「えっ?」
不意に玲士がつぶやいた言葉に、キョトンとする。
「雛子のささいな表情や言動で、きみがどれだけ煌人を愛しているのかが伝わってくる。煌人がまっすぐ育っている理由がよくわかるよ」
優しい眼差しに見下ろされながらそんなことを言われて、私は複雑だった。
自分の子を愛するのは当然のこと。世間の考えはきっとそうだし、自分でもそう思う。だけど、その愛情は、ただただ美しくあたたかいものってわけでもない。
日々の育児の中には小さな苦労や葛藤が数えきれないほどあり、すべてを投げ出したくなるくらいに疲れてしまうと、我が子が小さな悪魔に見えて、感情的に叱ることだってある。
だけど、それでも、『ママ』と呼ぶ声には振り向かずにはいられない。そして、涙目の煌人に『ごめんなさい』と言われると、泣きたいくらいに申し訳なくなって……その夜は寝顔を見ながらひとりで反省する。
『ごめんね。煌人。いっぱい怒ってしまったけど、大好きだよ――』
……煌人を愛しているとはいえ、そんな未熟な母親だ。私は。