密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「全然ダメだよ、私。そんなふうに言ってもらえるほど立派な母親じゃない」
そう言って自嘲すると、玲士は私の頭の上にポンと大きな手をのせた。
「俺に育児を語る資格はないかもしれないが……そうやって落ち込むこと自体、真剣に煌人と向き合ってる証拠だと思う。雛子の注いできた愛情は、絶対に伝わってる」
「玲士……」
私を勇気づける言葉とともに頼もしい笑みを向けられ、心が上向く。
今だけは、玲士を……味方だと思ってもいいのかな。
誰にともなく心の中で問いかけていると、彼はため息交じりに言った。
「しかし、俺のことでもそれくらい頭を悩ませてほしいものだな」
……玲士が知らないだけで、結構悩んでますけど。
胸の内だけでそう返事をし、さりげなく話を変える。
「さ、さーて、レジに並びますか」
「はぐらかしたな? まあいい。食事をしながらゆっくり雛子の気持ちを溶かしてやる」
不敵に宣言する低い声は、まさに悪役そのもの。
でも、そんなに簡単に溶かされてたまるものですか。まだあなたのこと完全に信用したわけじゃないんだから……!
私は自分にそう言い聞かせながら、改めて警戒心の糸を張り巡らせるのだった。