密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「あれ? ここって……」
「覚えていてくれたか。ニューヨークで初めてデートした店」
ショッピングモールからまた車で移動し、やってきたのは繁華街のビルに入っている寿司バー『MIYABI』だった。
個室に案内され、四人掛けのテーブル席で向き合ったところで、玲士が口を開く。
「向こうが本店なんだが、日本に逆輸入した形でつい数日前にオープンしたんだ。海外でお馴染みの華やかなロール寿司だけじゃなく、この店では本格的な握りも食べられる」
「へえ、そうなんだ……」
たしかに、店内のモダンなインテリアや和洋折衷の生け花は、ニューヨークで訪れたあの店とよく似ている。
「いろいろな寿司と料理をバランスよく食べられるセットがある。それでいいか?」
「うん。私はなんでも」
玲士は店員を呼んでスマートに注文を済ませたあと、持ち歩いていたハイブランドのトートバッグからタブレットを取り出す。そして真剣な顔で操作をし始めた。
社長って、こんな時でも仕事をしなければならないのかな……。
運ばれてきたあたたかいお茶に口をつけてその様子を見守っていると、不意に顔を上げた玲士が、テーブルの上を滑らせてタブレットを私の方に置いた。