密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「今日ね、サンタさんにお手紙書いたんだ」

 自転車で走りだすと、冷たい風がぴゅうっと頬を刺した。ハンドルを握る手もかじかむが、後ろのチャイルドシートに乗った煌人は、寒さなんかものともせず弾んだ声で話しかけてくる。

「ホント? なんて書いたの?」
「シュワレンジャーの変身ブレスくださいって」
「変身ブレスかぁ……」

 煌人は日曜の朝に放送している戦隊ヒーローの番組『炭酸戦隊シュワレンジャー』にハマっている。とりわけ好きなのは『ジンジャーエールゴールド』というキャラクター。

 ニヒルな彼は熱血漢の『コーラレッド』とたびたび衝突しているが、煌人はいつもゴールドの味方。変身ブレスも、ゴールドのが欲しいのだろうな。

 クリスマスは二週間後。いつおもちゃ屋に行こうかと悩んでいるうちに、スプリング・デイに到着する。店の脇に自転車を止め、煌人を連れて店内へ入る。

「おお、煌人くんおかえり」
「また背が伸びたわねえ」

 入り口近くの席で早めの夕食を取っていた常連の老夫婦が、煌人に優しく声を掛けてくれる。

 煌人は慣れた調子で「いつもご来店ありがとうございます」とにっこり笑った。育った環境のせいか、三歳にしてすっかり接客のプロだ。

< 9 / 175 >

この作品をシェア

pagetop