【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
はぁーっと小さなため息が漏れる。ハンガーには出勤の際着て来たセーターと膝より下の丈のスカートをかける。ベージュのセーターと白のスカートは、駿くんが選んでくれた物だった。
27歳らしくちょっと落ち着いていながらも、華やかさのあるデザインを彼が気に入ったらしい。都内でショッピングに出かけた時に、笑真に似合うと言って買ってくれた物だ。
ため息が漏れるのを我慢しベージュのパンプスから、仕事用の黒のパンプスに履き替える。
「おはようございます。」
「おはよう、望月さん。」
フロアに行くと鮫島課長が納品書と照らし合わせて品出しをしていた。
このフロアの一角をまとめるのがこの鮫島課長、年齢は30代後半で私の直属の上司である。いつも髪をきちっとオールバックにして、爽やかに制服を着こなす紳士的な雰囲気のあるよく仕事の出来る人だ。
家ではいつも嫁さんに尻に敷かれっぱなしなんだ、と笑って言うけれどお子さん2人と奥さんに囲まれて幸せそうな家庭を築いている。尻に敷かれているとはいえ、彼の口癖は「結婚っていいものだよ」だ。
いつも幸せそうに穏やかな笑みを称えてる鮫島課長を見ると、きっと幸せなんだとは思う。
けれども、影ではパート社員と不倫の噂がある。嘘か本当かは私は知らないが。
そもそも真実なんか知りたくもないのだが、下世話なパートのおばちゃん連中の噂は嫌でも耳に入る。