【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「何でそんな事を覚えているのよ。そんなの若気の至りよ」
「若気の至り、か…」
あの時は何をしていても楽しかったし、素直に笑えていたと思う。
「昔さぁ、奏がお父さんの車を借りてすっごい速さで夜中の道を走ってさ。私あの時本当に死を覚悟した」
「あっはっはっはっ。懐かしいなぁ。あの頃って命知らずだったよなぁ。笑真を乗せてあんな危ない事をするなんて今では考えられないし」
「本当に大切に想っている人にあんな事しないもんね!
後、アルバイトのお金を貯めてすっごいいかついバイクを買った時もバイクなんか危ないっていう私を無理やり後ろに乗せて。
あの時も魂は半分抜けきってたわよ!」
「あったなぁ~、そんな事も。そういえば日本に帰って来てから車買ったんだ。
今度ドライブでもする?」
顔を上げた奏は一瞬ぱあっと顔を輝かせたけれど、直ぐに目を伏せた。
「そんなの、兄貴が許さないか…」
その時に見せた切ない瞳は、あの頃私を不安にさせたあの顔と同じだった。
ぎゅっと胸が締め付けられる。
懐かしい思い出話をしてしまえば、何時間だって話していられそうだった自分が怖くて
私達は共有した時間が多すぎる。どうしてだろう。あの3年はとても濃い時間だった。それと同じだけ駿くんとの時間も重ねてきたはずなのに。