【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
まさかね。地元は結構広いし、同級生だからといって全ての人間が顔見知りな訳ではない。そんなのたまたまだ。たまたま年齢も地元も近いだけ。
それにしても私と同い年で子育ても落ち着いた、か…。早い人は本当に早い。 そんな事を考えながら、知り合いでない事を祈っていた。
けれど、頼まれた仕事を終えて事務所に行ってから履歴書に目を通すと、愕然としてしまった。
履歴書の名は佐々木 梢と言う。パッと見名前に心当たりは無かった。けれど、その履歴書に貼ってある写真にはどこか懐かしさがこみ上げてくる。
その懐かしさは戸惑いで、ある意味恐怖でもあった。
まるで見覚えがなかった’佐々木’とは結婚した後の名だろう。旧姓は、確か宇沢な筈。彼女は私と小中高の同級生だ。特別仲が良かった訳じゃないけれど、学校の廊下でばったりとあったら立ち話をしていた顔見知り程度の知り合いだ。
まさかこんな風に再会をするとは思っていなかったが。
事務所の四角い窓から空を見る。西の空に分厚い雲が覆いかぶさっていて、今にも小雨が一発やってきそう。
窓から見える空模様と同じくらい、憂鬱な気分だった。