【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
ぼんやりとした視界の中で、駿くんの困ったような笑顔が揺れる。何か言い訳を、そう考えてもとてもじゃないが頭が回らない。
「スニーカーが泥だらけになっているから」
「あぁ…起きてからちょっとコンビニに行ったからだね」
その言葉に駿くんはホッとしたように胸を撫でおろした。
「そんな事してるから風邪ひくんだよ。昨日東京の方結構雨が降ったんだろう?
後で靴は洗っといてあげるからね」
「…ありがとう。」
容赦のない優しさがとても痛かった。
嘘をつくという事。いくら他人を誤魔化せたとしても、自分自身だけは誤魔化せなかった。
午後の受付は1番乗りでいった筈が、既に人が並んでいた。混みあう病院の中で受付を済ませて、診察を待つ。
お医者さんに診察をしてもらうと「風邪ですね」と言われて、風邪薬と抗生物質をいくつか処方される。
1時間待たされて10分の診察でますますぐったりとしてしまったが、病院から貰った薬を飲んで数時間眠ったら気が付けば夕方になっていた。
熱冷ましが効いたのか、体は大分楽になっていた。
夢さえ見ずにぐっすりと眠ったお陰で体の怠さもマシになったと思う。