【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

一発降るかなと思った予想は大当たりだった。

これだから天気予報はあてにならない。けれどもここまで本降りになるとは思わなかった。からりとした空気だったので、ザーッと一気に降り注いで直ぐに晴れると思った。

けれどもぽつりぽつりと降り出した雨は、すっかりと空を灰色に塗りつぶしていって本降りになってしまった。


午後13時。10分前、旧姓宇沢。現在は佐々木さんがサービスカウンターに顔を出した。

一瞬姿を見ただけで、高校時代の面影と重なった。多少ふっくらとはしていたが、小動物のような可愛らしさはあの頃と変わらない。 間違いはない。

彼女は私が同級生だと気づくだろうか…。気づかずに忘れていてくれるのならば、そのままの方がいい。いつかは気づかれたとしても、自分から知り合いだとは言わないでおこう。そう心の中で決めていた。

サービスカウンターで待たされている彼女は、落ち着かずに視線を右へ左へと動かす。にこりと微笑みを作り頭を下げる。

「佐々木さんですよね?」

「あ!はい、そうですッ。今日からパートでお世話になる佐々木梢です。よろしくお願いします」

深く頭を下げた彼女の髪の毛の先が濡れていた。

突然の雨に降られてしまったのだろう。手に持っていた透明のビニール傘からは雨の雫がしたたり落ちていた。

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