【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
寝室まで着いて来た駿くんは子供のように私を寝かしつけて、ぽんぽんと布団を何度も叩いてくれた。
安心する。どうしても一緒に朝まで安眠は出来なかったけれど、陽だまりのような温もりは人を安心させる。
とんとん、と布団を叩く不規則な動きに駿くんの低いトーンの落ち着いた声。何でもない話をしながら、それに相槌を打ってるうちに目を瞑っていた。
「そういえば、」
「うん?」
「この間、母さんに会ってきた」
手の動きが一瞬止まる。
ゆっくりと瞳を開けると、駿くんは変わらぬ笑顔を見せていた。
「結婚する事とか、色々と報告。」
「そう…。どうだった?」
「別にいつも通りって感じ。ふぅん、そぉって。あの人って昔から俺にはそんなに関心がない人だったから」
「そっか。そうだったんだ…」
「母さんの近況報告なんか聞いたりして。
今は男の人と暮らしてるみたい。つっても小さい頃からころころと男を変える人だから長続きするかどうかは知らんけど。
もう結婚はこりごりっていつもの調子で言ってたよ。これから結婚をする息子の前で失礼な話ったらないよ」