【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

返事は急かさなかった。ゆっくりと考えて欲しいと言われた。
その日から何か月も考えた。

私のペースに合わせてゆっくりと歩幅を合わせてくれた。 そしていつしか奏が居なくなって、いつでも側に居てくれたのは駿くんだって気づいた。

支えられていたんだ。私と一緒に歩いてくれるこの人とならば、幸せになれると。


そして付き合って3年経ってから、彼は私へプロポーズをしてくれた。


付き合ってからも駿くんは変わることなく、常に優しくしてくれた。滅多な事では怒らないし、喧嘩もほぼした事がない平穏な毎日。

ゆったりと流れていく日々の中でそこには激しく動くような強い激情はなかったけれど、穏やかに笑っていられた。

それと同時に、私は自然と大人しくなっていった気がする。

勿論大人になったと言うのもあるが、駿くんに気に入られるような洋服に髪型。地味なメイクをした。

趣味や好きな事も彼に合わせて、本来の自分のずぼらさは隠してきちんとしていた。

今までの自分を上書きするように、私は変わって行った。それを悪い事だとは思わない。
ただ幾ら時が流れても不可解な事はひとつだけある。

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