【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「社員の望月と言います。よろしくお願いします。…制服を用意してますので更衣室に案内しますね。こちらへどうぞ」
望月、と自分の名前を言う時少しだけ声が小さくなってしまった。気づかないでくれ、と願いを込めた結果だと思う。
僅かに視線を逸らしたまま、けれども笑顔を崩さぬように笑って、彼女を更衣室まで案内する。
気づいているのか気づいていないのかは分からない。彼女は小走りで私の後を付いてくる。
「雨降ってましたか?」
「はい。急にどしゃ降りで。朝の天気予報で雨の事なんて言ってなかったから、油断しました。
慌ててコンビニに入って傘を買ってしまいました」
「あはは、そうですよね。天気予報では今日は1日晴れだって言ってましたもんね」
「まだ結構降ってます。それにしてもパート1日目早々ツイてないって思っちゃいました」
鮫島課長の言う通り明るく感じの良い人だ。…ううん、高校時代からイメージは全く変わっていない。
ちょっぴりふっくらとしただけで、小動物みたいに可愛らしくって人懐っこい所変わってない。