【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました

―――――

「ただいま」

「おかえりなさい。駿くん」

スリッパをぱたぱたと鳴らし、帰って来た彼を迎えに行く。
駿くんの手から鞄を受け取ったら、彼は瞳を細くして顔を上へ向けた。

「良い匂い。」

「今日は寒いからシチューにしたよ。それとね、来月のシフトが出たから駿くんに色々と相談しようと思って」

「本当?土曜か日曜休み取れた?」

こくんと頷くと駿くんは嬉しそうに微笑む。

「そう、それは良かった。
外も寒かったから、シチューも嬉しい。
直ぐに着替えていくから用意しといてよ」

そう言って自室に入って行く。そんな彼の広い背中を見つめていた。

キッチンに戻り、シチューを温め直す。冷蔵庫に入れておいたサラダとフランスパンをダイニングテーブルに並べ終える頃、部屋着に着替えた駿くんがリビングへとやって来る。

「おお、美味しそう。すっごい腹減ったよ。今日外回りばかりで昼飯食ってる暇なくってさ」

「おかわり沢山あるからね」

いただきます、と言ってダイニングテーブルで向かい合う。
シチューを一口食べて、美味しいと小さく笑ってくれた。

< 143 / 263 >

この作品をシェア

pagetop