【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
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「ただいま」
「おかえりなさい。駿くん」
スリッパをぱたぱたと鳴らし、帰って来た彼を迎えに行く。
駿くんの手から鞄を受け取ったら、彼は瞳を細くして顔を上へ向けた。
「良い匂い。」
「今日は寒いからシチューにしたよ。それとね、来月のシフトが出たから駿くんに色々と相談しようと思って」
「本当?土曜か日曜休み取れた?」
こくんと頷くと駿くんは嬉しそうに微笑む。
「そう、それは良かった。
外も寒かったから、シチューも嬉しい。
直ぐに着替えていくから用意しといてよ」
そう言って自室に入って行く。そんな彼の広い背中を見つめていた。
キッチンに戻り、シチューを温め直す。冷蔵庫に入れておいたサラダとフランスパンをダイニングテーブルに並べ終える頃、部屋着に着替えた駿くんがリビングへとやって来る。
「おお、美味しそう。すっごい腹減ったよ。今日外回りばかりで昼飯食ってる暇なくってさ」
「おかわり沢山あるからね」
いただきます、と言ってダイニングテーブルで向かい合う。
シチューを一口食べて、美味しいと小さく笑ってくれた。