【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
「え?」
「ん?」
「駿くんはずっと奏にとって良いお兄ちゃんだったと思うけど…?」
その言葉に麻子はほんの少し顔を歪ませた。
「あんた、高瀬から何も聞いてないね?」
「何の話…?」
「安田も離婚したとはいえ元々高瀬んちの御曹司な訳じゃん?きっとあいつの父親も兄弟会社を高瀬と安田の自分の息子に任せるつもりだったと思うわよ。
そのつもりで高瀬の父親も安田を養育してきたんじゃん。大学まで進ませて、でも大学2年の時ぱたりと授業料払わなくなったって話じゃない」
「待って、本当に何の話?私、奏からも駿くんからも何も聞いてない…」
ぽつりぽつりと話し出す麻子は、終始苦しそうな顔をしていた。
「だから、安田は高瀬の親父の血の繋がった息子ではなかったんでしょう。大学の時にDNA鑑定した結果分かった事実らしいわよ。
だから高瀬の父親は安田の事は自分の息子じゃないってあの時見限ったんじゃない。自身の会社を継がせる資格もないって。
そんな事今更分かったって20年間も自分の息子だと思って育てたんじゃない、そう考えたら私は薄情な話だとも思うけどね。それに高瀬駿だって半分は自分の血の繋がった弟だったんなら庇ってやっても良かったんじゃないかって。
それにその件に関しては安田は何も悪くないじゃない。いきなり父親だと思ってた男から自分の息子じゃないって突き放される気持ち、私だったらやりきれないけどね」