【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
この世界には何億の人も居て、すれ違うだけの他人も居るのに、どうしてたった一人の人と出会えると言うの?
その確率は一体どの位だったのだろう。
口を一文字に結んだまま振り向くと、へらっといつもの笑顔を見せる奏がそこには立っていた。
「私の前にはもう姿を現さないって!」
思わず怒鳴り声で言ってしまうと、一斉に周りの注目を集めてしまう。
奏は大きな瞳を細めて、両手を上にあげた。
「不可抗力。これは偶然だから俺のせいではない。」
「声を掛けないで!」
「ついつい。こんな繁華街でボーっと突っ立てるねーちゃんが居るからナンパ待ちでもしてるのかな、と思ったら笑真だった。」
「な、ナンパ待ちって!この私がそんな事を!」
「はいはい。それも分かってます。何だよ~?酔っぱらってんの?」
この間の涙が嘘だったかのように普通の顔をしている。それどころかけらけらと笑って軽口を叩いている。
結局はこういう男だ。
「麻子とちょっと飲んでただけよッ。別に酔っぱらってなんか」
「ほらー笑真って酒が弱かったからよく酔っぱらってお店とかでゲロ吐いてたじゃん。
俺はいっつもそれを片付ける役目でさぁ」