【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
じりじりと奏が側に寄って来るもんだから、後ろへ下がると同時に人とぶつかってその場でこけそうになる。
すると駆け寄ってきた奏に体を支えられる形になる。
ふわりと香る香水に、冷たい手のひらが体に触れると途端に懐かしい気持ちになる。
「危なっ!酒飲んでるのにそんなに暴れるなよ」
「別に暴れてる訳じゃあ…ちょっと離してよ…」
腕を強く振り払ったら、また奏はへらへらとした笑みを浮かべる。だからあんたってどうしてそうなの。
ぷいっと顔を背けて、背中を見せる、
「麻子とか懐かしいなぁ。」
この間私の前に現れないでと言ったばかりなのに、普通に話しかけてくるのは何で?
あんな泣き顔を見て、こっちだって泣き顔を見せて非常に気まずい気持ちでいっぱいなのに。
「麻子は元気?」
「元気そうだけど。私も久しぶりに会ったし」
背を向けたまま質問に答える。
「俺も呼んでくれたらいいのに」
「何で奏を……」
「懐かしい話いっぱいしたいじゃーん。高校時代はよく麻子と喧嘩したなぁーって。あいつ気が強くって、笑真を泣かせたら許さないからっていつも吠えてたもんなぁ」