【完】今日、あなたじゃない彼と結婚を決めました
確かに奏と麻子はよく喧嘩をしていた。と、いうか麻子が一方的に敵視をしていただけだけど。奏はいっつもへらへらと笑っていた。
でもね、麻子は奏の事が嫌いだった訳ではない。影ではよく褒めていたし、私の付き合う彼氏として認めてくれていた。
少なくとも駿くんよりかはよっぽど。
「奏くん。知り合い?」
その時奏を呼ぶ声が聴こえて、ゆっくりと振り返るとそこにはひとりの女性が立っていた。
あ。と思った瞬間に、それが誰か分かった。小柄で可愛らしい感じの女性。その人はあの日映画館で奏と一緒に居て、仲良さげに笑っていたその人だ。
「あぁ。うん。」
「こんばんは、」
女性はにっこりと微笑んでこちらへ小さく頭を下げた。
「こん、ばんは……」
「今、会社の飲み会で。
あ、奏くん次のお店決まってるみたいだから、それを伝えにきたんだけど」
「ああ。分かった。俺ちょっとこの人と話があるから、皆と先に行っててよ。」